監督署の人々 厚生労働技官
厚生労働技官(技官)とは国家公務員2種(現在でいう一般職)に合格し、労働局に採用されたノンキャリアの職員である。
監督署ではほぼ100%安全衛生課に配属され、労働安全衛生法の遵守を目的とした業務を行う。法令で規定された工事の届出やクレーン、エレベータ等の設置届の受理や実地検査、労災防止のための集団指導(法律の説明会みたいなもの)、個別指導(法違反の改善などを行政指導する)等を行っている。
技官の特徴としては、配属される部署が極めて限定的なのと、県外転勤が原則としてないことである。
監督官も監督部署を中心とした人事がなされるが、安全衛生課や労災課にも行くし、労働局の総務部門や一時的に監督官ではなくなる部署(監督官証票という警察手帳のようなものを取り上げられる)に配属されることが間々あるが、技官は監督署の安全衛生課と、それを指揮監督する労働局の健康安全課にほぼ限定された人事となる。
※追記。局によっては、技官に労災業務を行わせているところもある。
そして都道府県ごとの採用であるため、通常の人事では県外転勤はない。
監督官と比較するとその出世は遅い。安全衛生課長になるのは40代前半くらいが原則であり、大規模署の課長か労働局の課長補佐級くらいで退官する。
安全衛生課は監督官も課長になるし、平の職員として配属されることも多い。業務内容も半分近くは被るので、監督課と安全衛生課は実質的に二つで一つの部署といっても差し支えない。
そしてこの技官、現在は新規採用はなされてない。その1でも触れたが、新人事制度という悪夢の影響で10年近く前から完全に採用が止まっているのである。
だから一番の若手でも30代半ばくらいである。
外部からは何かと邪険に扱われる技官であるが、個人的には監督署には必要な人たちであると思う。労働安全衛生法は非常に複雑で理系の知識が必要となる専門的な法律であるが、理系学部出身かつ安全衛生部署にほぼ専任となる技官が持つ知識と経験は相当なものであり、監督官も教えを請うことは非常に多い。
私は技官の採用再会を切に願っている。
なお、本省に採用されたキャリアの技官というのも存在する。彼らは30代前半くらいで本省から出向してきて、労働局の「健康安全課」という監督署の安全衛生課を指揮監督する部門の課長になるが、監督課長になる人もいる。
技官が監督課長というのは少し違和感があるが、管理職の勉強としてはちょうどいいのであろう。