家庭教師事業を行っていた某企業に対し裁判所が破産手続開始決定をした。
その企業で業務委託契約により講師をしていた人達の一部が労働者性を主張して監督署に相談に行ってるとのこと。
確かに業務委託契約であっても実態で判断するため、監督署長が労働者性ありと判断して確認を行えば立替払の対象となる。
これは立替払に限らず賃金不払等でも同じである。
しかし倒産して報酬が支払われなくなった途端に労働者性を主張するのは正直疑問。
家庭教師をやるような人達なんだから、自分が業務委託であって労働者ではないという認識を持った上で業務を行っていただろうし、確定申告も事業所得で必要経費を抜かりなく計上して納税していたのではないだろうか(ただの憶測)。
この点、実態は明らかに労働者なのに、無知につけこまれて形だけ業務委託契約を結ばされていたケースとは異なるだろう。
労働者ではないというのであれば、倒産前に言うべきだったのではないか。
未払賃金の立替払は事業主が支払う労災保険料が原資。だが業務委託の講師は保険料算定の対象外のため、会社の実質的な負担は少なかったはず。にもかかわらず、倒産直後に労働者性を主張して立替払を受けると、他の事業主が真面目に払った保険料で穴埋めされることになり、制度の公平性が揺らぐように思う(倒産する事業主は労災保険料を結構な額未納しているという場合も多いが・・・)。
業務委託契約のメリットを享受してリスクも事業者として負っていたはずの講師たちが、倒産直後に労働者性を主張して国のセーフティネットに頼るのは、道義的に見てどうなのか。
実態が労働者なら法的に保護されるのは当然。だが事前のリスク放置と後出し主張が、弱者救済という制度の本来の趣旨を歪めてしまわないか。
まぁ確定申告については、立替払の対象となったら当然過去に遡って修正申告?するだろうけど。
ダラダラ書いてきたが、仮に労働者性が認められた場合、そのような働き方をさせた事業主が一番問題なのはいうまでもない。
また、報酬が未払の講師たちは本当に気の毒であって、一縷の望みにかけて立替払制度を希望するのは当然とも思う(自分も同じ立場ならそうする)。
したがって、矛盾するようだが立替払が認められてほしいという思いもある。
※ここからおまけ
未払賃金の立替払制度(ざっくりなので詳細はパンフレット等参照)
賃金の支払の確保等に関する法律(内部では「ちんかくほー」)に基づいて事業主が倒産した場合に未払の賃金を国が立替する制度。(独)労働者健康安全機構が行っている事業である。
・法律上の倒産(事業主がちゃんと破産手続き開始等の申立をした場合)
・事実上の倒産(↑の申立をしていないが、事業が停止して再開の見込がない場合)
に分かれ、法律上の倒産の場合は破産管財人等、事実上の倒産の場合は監督署長が未払賃金の調査等を行う。ただし、破産管財人等が未払賃金を認めなくても、労働者は監督署長に改めて調査を行うよう申請が可能。労働者性を主張する人たちは、この申請を目指していると思われる。
事実上の倒産の場合の調査は
認定(事業主が立替払の要件を満たしているか?)
↓
確認(個々の労働者の未払賃金はいくらか?)
↓
労働者が機構に請求書を送付
↓
機構が立替払金を振り込む
という流れである。
機構は調査結果を基に振込手続きをするだけなのに、自分たちが労働者を救っていると自画自賛している。
立替払の対象は賃金(定期賃金と退職金)の8割。この8割に文句を言う人たちがたくさんいるが、税金等が控除されていない所謂「額面」の8割であり、立替払金は退職所得として扱われるため、大抵の場合は非課税となる。社会保険料も控除されない。
通常、給与から税金等が控除されると手取りは大体8割くらい、だから立替払金も8割。むしろ普段の手取りよりも多くなる場合もある。
残せ2割よこせと言ってる人たちはこれを理解してほしい(パート等で控除額が少ない人は確かに手取りより減る場合もある)。
なお、立替払金に上限があるのは、この制度はあくまでセーフティネットだから。労災保険料は有限なのだから致し方ない。
立替払の調査は監督官の業務の一つである。処理が遅いとよく批判されるが、監督官の主たる業務はあくまで「事業場への監督指導」であって、立替払の業務は「おまけ」扱いなので、調査に必要な時間を多く充てることができない。また、調査は各種機関への照会が主で受動的な業務が多いというのも原因の一つである。