ろーきしょ!

労働基準監督官について酒を飲みながらアレコレ書くブログ

監督官の所属 安全衛生課 その1

 監督官はその名の通り、監督課という部署に配属されるのが原則である。規模が大きい監督署であれば、監督課は「方面」という名前なのだが、大抵の監督官は監督課や方面所属ということになる。

 

 監督署には「安全衛生課」という部署がある。安全衛生課はクレーンやボイラー等の検査、一定規模以上で届出が義務付けられている足場や工事の届出の審査、労災防止のための集団指導(法律の説明会のようなもの)、重大な労災が発生した場合の調査が主な業務だが、この部署にも監督官が配置される。

 

 かつては技官という理系の公務員が主戦力だったが、新人事制度の影響でその採用が10年以上停止されており、今後は監督官が主な担い手となるのは間違いない。

 

 さて、機械の検査も現在はその多くが外部委託されており、監督署が行うのは以前に比較してだいぶ少なくなった。そのため、現在安全衛生課は「個別指導」というものに力を入れている。

 

 個別指導とは何か。それは、労働安全衛生法(安衛法)に特化した調査、そして指導のことである。監督課所属の監督官の監督指導と一体何が違うのか?というと、まず、個別指導は基本的に労働基準法はチェックしない。だから賃金や労働時間等は確認せず、その代わりに、監督課の監督指導よりもより深く安衛法の指導を行う。法律違反の是正というより、労災防止を主な目的としているためだ。

 

 更にややこしいのは、技官の場合は個別指導一本で企業に出向くが、監督官の場合は、個別指導で行くこともあるし、監督指導として会社に行くこともある。

 どういうことかというと、安全衛生課所属といえども監督官なんだから監督指導もせよ、という上からのお達しにより、監督官所属の監督官と同じように賃金、労働時間等の調査も併せて個別指導を行う。よーするに監督課の監督官が行う監督指導と全く同じことをするのだ。そしてそれが「監督課の実績」としてカウントされることになる。

 ただし安全衛生課の監督官は、労働者からの法律違反の申し立てによる監督指導(申告監督)は行わない。一部の局によってはそうでもないが。

 

 責任者の安全衛生課長は技官だったり監督官だったり様々である。技官ではなく監督官の場合、若くして課長になるため技官よりも安衛法を熟知しておらず、また、検査や工事の届出に疎い人もいるため、課長も部下も監督官という場合は一部業務が滞ってしまうこともある。技官の場合は労働基準法が完全に業務の範疇外だが、安全衛生課所属の監督官が行った監督指導の報告書(内部では復命書と呼ぶ)の決裁も当然上司として行う。監督指導として復命をする場合は、実質的に監督課長が決裁権者のため、安全衛生課所属の監督官は、安全衛生課長と監督課長の2人を満足させる復命書を作成しなければならない。

 ちなみに個別指導の復命書も監督課長を通すが(監督課長は副署長的ポジションのため、原則として安全衛生課と労災課の文書にもハンコを押す)、安全衛生課長がハンコを押したのだから軽くチェックする人もいれば、そんなの関係なしにバシバシダメだしをする人もいる。

 

 時々勘違いしてる人がいて、監督課は労働基準法、安全衛生課は安衛法を所管している、なんてブログやTwitterに書いているのをチラホラ見るが、それは大間違いで、監督課の監督官も当然安衛法違反の調査指導は行うし、建設現場や工場といった、安衛法の調査が主体となる現場にも行く。もちろん安全衛生課所属の監督官の方が建設現場等へ行く割合は高いが。逆に上記のとおり、監督官であれば安全衛生課所属でも労働基準法の調査を行うこともある。あぁ・・・ややこしい。

 技官の採用がない以上、監督課と安全衛生課の垣根は今後ほとんど無くなるのではないかと思う。

 

 

書ききれないため、続く・・・・