ろーきしょ!

労働基準監督官について酒を飲みながらアレコレ書くブログ

事務所衛生基準規則

 前田恒彦元検事が事務所衛生基準規則(事務所則)に言及している記事を読んだ。本日付けの記事でyahooニュース等にも載ってるのでぜひ見てほしい。

 

 事務所則は労働安全衛生法(安衛法)に基づく省令の一つ。

 安衛法は省令に具体的な基準を委ねているため、膨大な省令を把握しないとほとんど法違反を指摘できないのである。

 以前の記事でも書いたが、この安衛法に基づく省令の知識・経験の習得というのが監督官にとって一番大事で一番のハードルとなる。監督官が所管する一番メインの法律は労働基準法ではなく安衛法、とよく教えられた。

 

 安全衛生を専門に担う技官の採用が止まって10年以上経過し、おそらく今後も採用を再開することはないため、技官に代わる安全衛生の専門家とならなければならない監督官にとっては、今まで以上に安衛法は重視せねばならない。ところが最近は長時間労働や 賃金不払い等労働基準法違反の業務ばかりさせられ、建設現場やら工場やらの監督が減っている。これは危惧せねばなるまい。かつては技官からヘルメットやマスクの付け方から厳しく指導されたものだが・・・ 。

 

 さて、事務所則。検事の記事にもあるが、トイレの数やら照明の明るさやら、大掃除やらまさに「オフィスを快適に整えるため」の基準を設けている。

 いろいろな基準を設けているのだが、事務所則は監督行政の中で、

 

 

 

 ほとんど無視されている。

 

 

 

 もしかしたら事務所則という省令を知らない監督官もいるかもしれない。省令は知っていたとしても中身を理解してる監督官はほとんどいないのではないか。

 事務所則違反を指摘した監督官も全国で年間数人程度ではないだろか(統計は把握してないので適当)。それくらい事務所則は重視されていないというか、忘れられている省令である。私はマニアなので、臨検した先が暗かったりすると事務所則を持ち出して是正を促すこともあるが、上司に対する復命の際には、「こんなマニアックな違反よく指摘したね(笑)」なんて言われていた。

 

 

 なぜこんな有様なのか?それはやはり、命に直結しないからだと思う。

 

 安衛法(政令、省令含め)は労働者の命を守る法律である。労働者が死ぬたびに省令が改正され、毎年毎年何かしら追加される。労働安全衛生規則、有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則、

 

 この3つが省令の中でも一番よく扱う規則であるが、それは違反=重大な労災に繋がる可能性が高い規則だからだ。

 

 一方で事務所則。個人的にはしっかりと守られるべき省令という認識を持っているが、他の省令に比較して、労災の危険度が高くないというのもあるし、トイレの数など是正させるには非常に困難であるのも一因かと思う。

 

 この辺り改善の必要はあると思う。